本ページは培養上清および細胞外小胞に関する一般的な科学的知見の解説であり、当社製品の効果・効能を説明するものではありません。
本品は研究用試薬です。動物又はヒトの疾病の診断、治療若しくは予防の目的で使用すること、及び身体の構造又は機能に影響を及ぼす目的で使用することはできません。本品は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)に基づく承認又は認証を受けた医薬品、動物用医薬品、再生医療等製品のいずれでもありません。
培養上清とは何か

細胞を培養すると、細胞は培地の中へさまざまな生理活性物質を放出します。この培地から細胞そのものを取り除いた液体を、培養上清(Conditioned Medium:CM)と呼びます。
含まれるのは、細胞が分泌したタンパク質、脂質、核酸、そして細胞外小胞などです。培地に由来する成分も残ります。当社が供給しているのは、この培養上清です。
細胞が周囲へ分子を放出する現象は、パラクライン(傍分泌)と呼ばれています。間葉系幹細胞は、増殖因子やサイトカインなどの液性因子、および細胞外小胞を介して周囲の細胞に働きかけると考えられており、この働きかけの総体が「間葉系幹細胞のパラクライン効果」として研究されています。培養上清は、この働きかけに関わる分子群を、培地ごと丸ごと回収したものです。
培養上清の性質は、精製の有無によっても変わります。当社は精製工程を経ない全画分(未精製)で供給しており、特定の成分だけを濃縮・単離することはしていません。これは、特定成分への絞り込みが、組成に関する裏づけのない主張につながることを避けるための方針でもあります。
培養上清の概要
培養上清の組成は一定ではない
これが、培養上清という材料を理解するうえで最も重要な性質です。
細胞が分泌する分子は、細胞種によって異なります。同じ細胞であっても、周囲の環境が変われば変わります。培地の組成、培養密度、酸素濃度、回収のタイミング。これらがすべて組成に影響します。
つまり、培養上清の品質は工程の管理によって確保されます。最終製品だけを検査しても、そこに至る条件が揃っていなければ、同じものは再現できません。当社が原材料の選定から工程内の判断まで開示しているのは、この理由によります。
細胞外小胞との関係
培養上清に含まれる成分のひとつが、細胞外小胞です。エクソソームという語を目にする機会が増えていますが、これは細胞外小胞の一種を指す名称です。
細胞外小胞(Extracellular Vesicles:EVs)とは、細胞から分泌される脂質二重膜を持ち、自己複製能(機能的な核)を持たない粒子の総称です。産生経路やサイズにより、エンドソーム由来の膜が細胞外へ放出される過程を経る約100 nmのエクソソーム、細胞膜の出芽により生じるマイクロベシクル(エクトソーム)、死細胞の膜に由来するアポトーシス小体に分類されるとされています。
細胞外小胞の分類
ただし、これらの定義は必ずしも明確ではなく、産生経路の特定も技術的に困難です。そのため国際細胞外小胞学会(ISEV)は、産生経路を厳密に区別しない総称として「細胞外小胞(EVs)」という名称を用いることを推奨しています。ISEVが公表する研究指針「MISEV」は2014年の初版以降、2018年、2023年と改訂が重ねられ、現行版のMISEV2023では、EVの産生・分離・特性解析の各手法について、研究者が満たすべき最低限の報告基準が示されています。
構成分子も一定ではありません。1つ1つの細胞外小胞が同じ構成要素を持つとは限らず、特定の分子で細胞外小胞の性質を規定することは、現状では困難とされています。
EVであることの証明に必要とされる基準
日本再生医療学会のガイダンス(第1版)は、ある調製物が細胞外小胞を含むことを示すために、次の2点の証明が必要としています。
EVsとしての形状・サイズを有する粒子が存在すること。電子顕微鏡、ナノ粒子トラッキング解析(NTA)、動的光散乱(DLS)などの手法で確認します。
テトラスパニン(CD9、CD63、CD81など)や後期エンドソーム関連因子(TSG101、Alixなど)といったEVマーカー分子が存在すること。ウエスタンブロット、ELISA、プロテオミクス解析などの手法で確認します。
同ガイダンスが引用するISEVのポジションペーパーでは、EV画分に特異的とされるタンパク質等のマーカー分子を、少なくとも3種類、半定量的に解析すべきとされています。この2点の証明を伴わない調製物について「エクソソーム」「細胞外小胞」を名乗ることは、組成に関する裏づけのない表示になり得ると、当社は考えています。
制度の現状
細胞外小胞については、各国で研究が行われている段階にあります。2024年4月時点において、細胞外小胞を主たる構成要素とする医薬品に薬事上の販売承認を与えた国はなく、ISEVや各国におけるガイダンス・指針の策定も十分ではないと、日本再生医療学会のガイダンスは記しています。
動物用医薬品の領域においても、承認された細胞外小胞製品は存在しません。評価の方法そのものが、まだ定まっていない領域です。
ヒト領域における規制動向(参考情報)
当社が扱うのは動物(犬・猫)用の研究用試薬であり、ヒト向け医療とは適用される法体系が異なります。ただし、ヒト領域での規制動向は、細胞外小胞という同じ対象をめぐる考え方の変化を示す参考情報として、あわせて記載します。
ヒトの細胞を投与する治療は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」(安確法)の対象となりますが、エクソソーム等の細胞外小胞は細胞そのものではないため、現行の安確法の対象には含まれていません。この点について、細胞外小胞を用いた医療の実施施設数の増加を受け、規制の対象とすべきとの提言が学会等から出されています。
厚生労働省は2024年7月31日付の事務連絡「エクソソーム等の製品に係る監視指導について」において、医薬品的な効果を標ぼう・暗示する未承認のエクソソーム等の製品を、無承認無許可医薬品に該当し得るものとして注意喚起しました。あわせて、安確法の枠組み見直しに関する検討も進められています。